大阪高等裁判所 平成10年(ラ)950号 決定 1998年12月08日
当事者
別紙当事者目録記載のとおり
主文
1 原決定を取り消す。
2 相手方らの本件移送申立をいずれも却下する。
理由
一 本件抗告の趣旨及び理由、相手方らの反論
別紙「抗告状」及び「抗告理由書」並びに「即時抗告に対する意見書」(各写し)記載のとおりである。
二 当裁判所の判断
1 抗告人らは本件訴訟において、相手方ら全員に対し民法七〇九条、七一九条の共同不法行為に基づき(相手方取締役らについては更に商法二六六条ノ三第一項に基づき、相手方会社については更に民法七一五条又は商法二六一条三項、七八条二項及び民法四四条一項に基づき)損害賠償を請求しており、したがって抗告人らは、不法行為地又は義務履行地及び併合訴訟の裁判籍としていずれも大阪地裁に土地管轄を有するところ、相手方らは、民訴法一七条に基づき、相手方らの住所地及び併合訴訟の裁判籍として土地管轄の認められる東京地裁に移送を求めているものである。
そこで、以下民訴法一七条所定の移送要件の有無を検討する。
2(一) 訴訟の著しい遅滞を避けるとの要件について
本件事案の概要及び現段階における移送申立に関する当事者双方の主張等を総合勘案すると、現在予想される人証のかなりの者が東京地裁近辺に居住していること、また書証も同様に東京地裁近辺に所在することなど、相手方らの主張する事項のいくつかは、本件移送申立の当否を判断するに当たり考慮すべき要素といえる。
しかし、大阪地裁の所在位置、東京大阪間の距離及び今日における発達した交通事情に照らすと、人証の取り調べを大阪地裁でしたからといってそれほどの支障を生ずるとは考えられないし、場合によってはテレビ会議システムや書面による尋問、大規模訴訟に関して新設された民訴法の規定(民訴法二六八条)を活用することにより対処することは可能と考えられる。また、書証はそれがどこに存在しようとも、取調べに要する時間や手数にそれ程の違いがあるわけではない。
したがって、右のような事情があるからといって、大阪地裁で本件訴訟の審理を行っても、東京地裁に移送して審理を行う場合と比べて訴訟が著しく遅滞すると認めることはできない。そして、他に右移送要件の存在を認めるに足る的確な主張及び資料はない。
(二) 当事者間の衡平を図る必要があるとの要件について
相手方らが抗告人らに比べて特に経済的に劣るとか、移動困難な健康状態にあるとは認められず、大阪地裁で本件訴訟の審理を行うことにより相手方らの負担が増大するとしても、このような不利益を、東京地裁に移送されることにより抗告人らに生ずるであろう不利益よりも優先させるべき合理的な理由は認め難い。
なお、本件と同種訴訟が仙台、東京、広島の各地裁に係属しているという事情は、本来抗告人らとは無関係な事情であって、本件訴訟における当事者間の衡平を考える際にはさほど重要視することはできないし、相手方らは、現在は倒産したとはいえ、もともと全国的に営業を展開し利益を上げていた大企業及びその取締役であり、その営業の結果、これに関連する訴訟が全国の裁判所で提起されることはやむを得ない事態というほかはなく、相応の応訴の負担は受忍すべきものである。そして、他に右移送要件の存在を認めるに足る的確な主張及び資料もない。
3 以上のとおりであって、少なくとも現段階においては、大阪地裁で本件訴訟の審理を行うことについて、民訴法一七条所定の移送要件があると認めることはできない。
よって、相手方らの本件移送申立を認容した原決定は相当ではないから、これを取り消し、本件各移送申立を却下することとし、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 中田耕三 裁判官 高橋文仲 裁判官 辻本利雄)
当事者目録
大阪府<以下省略>
抗告人(甲事件原告) X1
徳島市<以下省略>
同 X2
大阪府<以下省略>
同 X3
京都市<以下省略>
同 X4
京都市<以下省略>
同 X5
和歌山県<以下省略>
同 X6
京都府<以下省略>
同 X7
大阪府<以下省略>
同 X8
徳島県<以下省略>
同 X9
大阪府<以下省略>
同 X10
大津市<以下省略>
同 X11
京都市<以下省略>
同 X12
大阪府<以下省略>
同 X13
千葉県<以下省略>
同 X14
右一四名訴訟代理人弁護士 山﨑敏彦
同 佐井孝和
同 田端聡
同 片岡利雄
同 斎藤英樹
同 澤登
同 片山文雄
同 市瀬義文
同 河野豊
同 向来俊彦
同 室永佳宏
神戸市<以下省略>
抗告人(乙事件原告) X15
和歌山県<以下省略>
同 X16
大阪府<以下省略>
同 X17
大阪府<以下省略>
同 X18
大阪府<以下省略>
同 X19
右五名訴訟代理人弁護士 山﨑敏彦
同 佐井孝和
同 田端聡
同 片岡利雄
同 斎藤英樹
同 岩崎利晴
同 澤登
同 片山文雄
同 市瀬義文
同 河野豊
同 向来俊彦
同 室永佳宏
東京都中央区<以下省略>
相手方(甲・乙事件被告) 山一證券株式会社
右代表者代表取締役 Y1
東京都<以下省略>
同 Y2
千葉県野田市<以下省略>
同 Y1
千葉県安浦市<以下省略>
同 Y3
東京都品川区<以下省略>
同 Y4
千葉県八千代市<以下省略>
同 Y5
神奈川県横浜市<以下省略>
同 Y6
東京都武蔵野市<以下省略>
同 Y7
東京都立川市<以下省略>
同 Y8
千葉県舟橋市<以下省略>
同 Y9
東京都中央区<以下省略>
同 Y10
右一一名訴訟代理人弁護士 田中慎介
同 久野盈雄
同 今井壮太
同 安部隆
同 市村英彦
東京都足立区<以下省略>
相手方(甲・乙事件被告) Y11
右訴訟代理人弁護士 石井吉一
同 浜二昭男
同 三木祥史
同 佐藤誠治
同 中所克博
同 佐藤浩秋
抗告状
当事者 別紙当事者目録記載のとおり
右原告らと被告ら間の大阪地方裁判所の左記の本案事件について、大阪地方裁判所第二五民事部が、相手方(被告ら)の申立てによって平成一〇年一〇月五日なした移送決定に対し不服であるから即時抗告をする。
記
平成一〇年(ワ)第三八二九号 損害賠償請求事件(甲事件)
平成一〇年(ワ)第六〇七九号 損害賠償請求事件(乙事件)
原判決の表示 平成十年(ラ)第九五〇号
事件番号 平成一〇年(モ)第三八六一号
事件番号 平成一〇年(モ)第四二二八号
事件番号 平成一〇年(モ)第四三五四号
事件番号 平成一〇年(モ)第四三七五号
主文 本件をいずれも東京地方裁判所に移送する。
抗告の趣旨
一、原決定を取り消す。
二、相手方らの移送の申立てを却下する。
との裁判を求める。
抗告の理由
追って述べる。
平成一〇年一〇月一二日
右抗告人代理人
弁護士 山崎敏彦
弁護士 澤登
大阪高等裁判所 御中
当事者目録
大阪府<以下省略>
抗告人(甲事件原告) X1
徳島市<以下省略>
抗告人(甲事件原告) X2
大阪府<以下省略>
抗告人(甲事件原告) X3
京都市<以下省略>
抗告人(甲事件原告) X4
京都市<以下省略>
抗告人(甲事件原告) X5
和歌山県<以下省略>
抗告人(甲事件原告) X6
京都府<以下省略>
抗告人(甲事件原告) X7
大阪府<以下省略>
抗告人(甲事件原告) X8
徳島県<以下省略>
抗告人(甲事件原告) X9
大阪府<以下省略>
抗告人(甲事件原告) X10
大津市<以下省略>
抗告人(甲事件原告) X11
京都市<以下省略>
抗告人(甲事件原告) X12
大阪府<以下省略>
抗告人(甲事件原告) X13
千葉県<以下省略>
抗告人(甲事件原告) X14
神戸市<以下省略>
抗告人(乙事件原告) X15
和歌山県<以下省略>
抗告人(乙事件原告) X16
大阪府<以下省略>
抗告人(乙事件原告) X17
大阪府<以下省略>
抗告人(乙事件原告) X18
大阪府<以下省略>
抗告人(乙事件原告) X19
(送達場所)
大阪市<以下省略>
電話 <省略>
ファックス <省略>
抗告人一九名訴訟代理人 山崎敏彦
大阪市<以下省略>
同 佐井孝和
大阪市<以下省略>
同 田端聡
大阪市<以下省略>
同 片岡利雄
大阪市<以下省略>
同 斎藤英樹
大阪市<以下省略>
同 岩崎利晴
大阪市<以下省略>
同 澤登
大阪市<以下省略>
同 片山文雄
大阪市<以下省略>
同 市瀬義文
大阪市<以下省略>
同 河野豊
大阪市<以下省略>
同 向来俊彦
大阪市<以下省略>
同 室永佳宏
東京都中央区<以下省略>
相手方(甲・乙事件被告) 山一證券株式会社
右代表者代表取締役 Y1
東京都<以下省略>
同 Y2
千葉県野田市<以下省略>
同 Y1
千葉県安浦市<以下省略>
同 Y3
東京都品川区<以下省略>
同 Y4
千葉県八千代市<以下省略>
同 Y5
神奈川県横浜市<以下省略>
同 Y6
東京都武蔵野市<以下省略>
同 Y7
東京都立川市<以下省略>
同 Y8
千葉県舟橋市<以下省略>
同 Y9
東京都中央区<以下省略>
同 Y10
東京都足立区<以下省略>
同 Y11
<以下省略>